During the service in a church on Amager (1891-92)
ムンステズより4つ年下のヴェントーフは、デンマーク国外ではさらに知名度が低いかもしれない。そもそも風俗画家に対する理解は、どうしても国内に留まる傾向が強い。しかしデンマークの社会を知ろうとするなら、その鍵は風俗画の中にこそある。 Carl Wentorf: Under gudstjenesten i en kirke på Amager (During the service in a church on Amager). 1891-1892. Oil on canvas. 167.5x142cm. SMK (KMS1461)https://collection.smk.dk/#/en/detail/KMS1461
During the service in a church on Amager (detail)
デンマークの人たちは、人間観察に非常に長けているから、19世紀後半の風俗画家ともなれば、集団肖像画において様々な表情の描き分け方などもなかなか上手い。アマーの教会の礼拝の様子を描いた大作は、王室が買い上げて現在は国立美術館(SMK)にある。海外でもよく知られるようになった作家ばかりが取り上げられるが、島嶼に暮らす女性たちの民族衣装と、毎日曜日に正装で教会へ行くということの社会的意味をよく考えてみる必要があるだろう。130年前の、コペンハーゲンのすぐ近くにありながら、おそらく都市では見られなかった風景に違いない。
Dragoer – The storm is drawing closer
コペンハーゲン空港の直ぐ横に、12世紀から続くドラウエア Dragør の漁村がある。かつてはハンザ同盟の港としての特権も認められていた。この村の中心部の町並みは、今でも伝統的な雰囲気が保たれていて、コペンハーゲンの市街とは違う、やや鄙びた趣がある。
嵐がやって来そうなので慌ててアヒルを庭に誘い入れている母親とその子。アヒルは淡水域で暮らすことが多いが、原種のマガモは海上で暮らすこともできたので、アヒルも海上で暮らすことができるのだそうだ。アンデルセンの童話で扱われているように、ガチョウもアヒルもデンマークではありふれた家禽だったと思うが、絵画のモチーフに使われることはあまり多くない。
描かれている場所を Google Street View で特定しようとしたが、よく判らなかった。この絵で向こうに描かれている砂浜は20世紀なって埋め立てられ、建物以外にもこれとは違う景観になっていることは間違いない。
Carl Wentorf: “Dragør – optrækkende uvejr”. (Dragoer – The storm is drawing closer) Oil on canvas. 57×74cm. Collection ArsX. (AX301)
Portrait of Grandmother Frida Rasmussen
“Mormor Frida Rasmussen”. Portrait of Grandmother Frida Rasmussen. フリーダ(ラスムセン)お祖母さんの肖像
1903. Oil on canvas. 54×45cm. Collection ArsX. (AX81)